「1000分の1の所有権一部移転登記」+「1000分の999の共有物分割登記」とは?
2025.06.02
不動産の登記記録を見ているとまれに
(権利部 甲区)
1 所有権移転 (省略) 所有者 A
2 所有権一部移転 原因 平成7年7月7日売買 共有者 1000分の1 B
3 A持分全部移転 原因 平成7年7月7日共有物分割 所有者 1000分の9999 B
といった記載の登記記録を見ることがあります。
要するにA→Bへと所有権が移転しているのですが、あえて2件の登記を入れているわけです。
なぜ、わざわざこんなことをするのかというと、
この登記の方法を用いることで、登録免許税を安くすることができた、からです。
登録免許税は登記申請をする際に収める必要がある税金であり、不動産の価格に税率を乗じて算出します。
所有権移転の登記は、不動産の価格×1000分の20です(登録免許税法 別表第一 1(ハ)、なお租税特別措置法という時限立法で土地売買は1000分の15)
一方、共有物分割(共有関係を解消する登記)の登記は、不動産の価格×1000分の4となります(登録免許税法 別表第一 1(ロ))
たとえば、不動産の価格が1000万円だった場合、
単純に、A→Bへの所有権移転登記を申請すると、1000万×1000分の20=20万円
が登録免許税となります。
これを、上記の登記記録の通りの移転の方法を用いると、
① 1000万×1000分の1×1000分の20=200円(この場合税金は1000円)
② 1000万×1000分の999×1000分の4=39960円(この場合税金は39900円)
①の税額1000円+②の税額39900円=40990円
となるため、大幅な登録免許税の節約ができます。
もっとも、このような方法は、脱法行為であるため、現在は(登録免許税法 別表第一 1(ロ))の税率を適用できるシチュエーションを限定することで、上記のような方法で登録免許税を節税することはできなくなっています。
(登録免許税法 別表第一 1(ロ))の1000分の4の税率が適用できる場合は下記の条文となっています。
登録免許税法施行令 第9条
(共有物の分割による移転登記等の場合の課税標準)
共有物である土地の所有権の移転の登記において法第十七条第一項又は別表第一第一号(二)ロ若しくは(十二)ロ(2)の規定の適用がある場合におけるその共有物について有していた所有権の持分に応じた価額に対応する部分は、当該共有物の分割による所有権の持分の移転の登記に係る土地(以下この項において「対象土地」という。)につき当該登記(以下この項において「対象登記」という。)の直前に分筆による登記事項の変更の登記(以下この項において「分筆登記」という。)がされている場合であつて当該対象登記が当該分筆登記に係る他の土地の全部又は一部の所有権の持分の移転の登記(当該共有物の分割によるものに限る。以下この項において「他の持分移転登記」という。)と同時に申請されたときの当該対象土地の所有権の持分の移転に係る土地の価額のうち当該他の持分移転登記において減少する当該他の土地の所有権の持分の価額に応じた当該対象土地の持分の価額に対応する部分とする。
2 前項の規定は、共有物である建物の所有権又は共有に係る地上権、永小作権、賃借権若しくは採石権の分割の登記を行う場合について準用する。
とても分かりづらい条文なので例を示しますと、
まず、100㎡の土地(甲)をAとBが2分の1ずつ共有している場合を前提とします。
この土地を2つの土地にして、それぞれをAとBが単独所有とするために、
甲を分筆して(甲1)50㎡と(甲2)50㎡の土地とします。
そうすると、(甲1)と(甲2)をAとBが2分の1ずつ共有している状態となります。
この場合の、(甲1)の土地をAの単独所有とするための、B持分全部移転(2分の1移転)と、(甲2)の土地をBの単独所有とするための、A持分全部移転(2分の1移転)の登記が、1000分の4の税率となります。
実際には、こんなにきれいに持分を分けることができないため、1000分の20の税率と1000分の4の税率が適用される部分が混在することになります。
その計算をするための下記のソフトなどを用いて算定することになります。
このように、現在は「共有物分割」を原因とした脱法的な減税はできませんが、このような手法が用いられていたことがかつてはありました。

