コラム情報

電子署名について【後編】

2021.11.02

こんにちは、司法書士法人鈴木総合事務所 社員司法書士の岡本です。

前編として、電子署名とは何か、というお話をいたしましたが、今回は後編として、「事業者署名型(立会人型)電子署名」についてお話しします。

 

電子署名とは「デジタル版印鑑」で、「実印に相当する電子署名」と「(それ以外の)認印相当の電子署名」については、いずれも電子証明書の発行を受けて行うものである、というお話をいたしました。

 これら2種類の電子署名は、いずれも「当事者その人(法人の場合は当事者である法人の代表者その人)の本人確認を経て発行された、その人のための電子証明書」を取得することにより、電子署名ができる、「当事者署名型の電子署名」です。最大の特徴は、署名する前に、電子証明書の発行を受けておく必要があるわけです。実印登録をしないと印鑑証明書の発行が受けられないのと近いです。

 しかし、近年よく取り上げられる「クラウドサイン」や「ドキュサイン」等の「事業者署名型(立会人型)電子署名」と呼ばれている電子署名は、当事者署名型の電子署名とは全然違うものです。

 契約書に電子署名を行う場合の手続きが、どのような仕組みになっているか見てみましょう。

 

(送信者側の作業)

1.電子契約サービス事業者のブラウザ上に署名を受けたいPDFファイルをアップロード

2.アップロード時に受信者となる相手方の宛先(メールアドレス)を入力

3.受信者にメール送信

(受信者側の作業)

4.受信したメールの内容に従い、電子契約サービス事業者のブラウザにアクセス

5.書類の内容を確認後、同意ボタンを押す

 

 5.までの手順が終了すると、送信者・受信者双方の同意が成立します。

 この段階に至り、送信者及び受信者の氏名、同意日時等を証明するタイムスタンプがPDFファイルに付され、電子契約サービス事業者名義の電子証明書が添付されます。

 「〇〇〇〇さんと△△△△さんが〇年〇月〇日×時×分 本契約書の内容に同意した」という内容について、電子契約サービス事業者が押印により証明しているイメージですね。

 ここまで読んでこられた皆様は、何かに似ているとお思いになりませんか。

 成立した契約書について、第三者がその成立を認めて認証のため押印する・・・・・・そう、公証役場で公証人の先生からいただく「確定日付」に似ていますね。というより、電子版確定日付と言ってもいいかもしれません。

 確定日付を見て、「まるで実印押印みたい!」とお思いになる方はおそらくいらっしゃらないでしょう。実印押印に例えられる当事者署名型の電子署名と、事業者署名型電子署名は全く違うシステムだと言うことができます。

 

 近年、商業登記においては、事業者署名型電子署名の付された書類(PDFファイル)も、添付書面として認められるようになりました。

 ただし、以下の2点にはご注意ください。

(1)事業者署名型電子署名で許容されるのは、添付書面が紙である場合に会社実印・個人実印の押印が求められていないもの、つまり紙の場合に印鑑の書類が問われないものに限られます。

  例えば、取締役会設置会社において新しく代表取締役を選定する場合であり従前の代表取締役が出席しない場合には、議事録を紙で作成する場合、出席取締役・出席監査役全員の個人実印押印及び市区町村長発行の印鑑証明書の添付が求められます。ですので、書類をPDF化し電子署名する場合もそれに準じて、公的個人認証電子証明書(または民間の認証局発行の特定認証業務電子証明書)による電子署名が求められます。

(2)世間に流通している事業者署名型電子署名のすべてが、商業登記の添付書面に付する署名として使用できるわけではありません。

  商業登記の添付書面に使える事業者署名型電子署名については、法務省民事局のホームページをご参照ください。

 

 

参考文献)「会社議事録・契約書・登記添付書面のデジタル作成実務Q&A」(日本加除出版株式会社)

 

参考HP)法務省民事局 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji60.html