コラム情報

電子署名について【前編】

2021.07.12

こんにちは、司法書士法人鈴木総合事務所 社員司法書士の岡本です。

今回のコラムは私が担当し、電子署名のお話をしたいと思います。

 

電子署名とは何か、皆さんご存じでしょうか。

電子署名とは何かをざっくりとまとめると、「デジタル版印鑑」です。

当事者が契約書等の書面に印鑑を押すところは容易に想像できますが、PDF形式等デジタル文書には印鑑を押せません(当たり前のことを偉そうに書きました)。押印の代わりに当事者が電子署名をすることにより、当事者押印済の契約書と同じ効力を持ちます。「印鑑」の代わりなのに「署名」という名称なのは面白いですよね。

印鑑にも実印や認印等、いくつか種類があるように、電子署名にもいくつか種類があります。

1 実印に相当する電子署名

個人の場合は「公的個人認証電子証明書」を使用する電子署名です。マイナンバーカード(個人番号カード)に格納された電子証明書を利用して電子署名します。マイナンバーカードの発行に際し市区町村が本人確認を行うので、ちょうど個人の印鑑証明書発行システムと同じですね。

法人(会社等)の場合は「商業登記電子証明書」を使用する電子署名です。管轄法務局において発行された電子証明書を利用して電子署名します。こちらも登記官の審査を経て発行される電子証明書ですので、法人の印鑑証明書発行システムと同じです。

いずれも、「印鑑証明書を発行できる機関で発行された電子証明書を使う」ことでは共通しており、印鑑証明書とイメージが近いので、わかりやすいと思います。

2 それ以外の電子署名

実印に相当する電子署名は、公的な電子認証局(市区町村、管轄法務局)の発行した電子証明書を使って行うものですが、公的ではない、民間の電子認証局に電子証明書の発行を受けて行う電子署名もあります。

これらは、実印に相当する電子署名に比べると信用性は低いですが、民間の認証を受けている、という点に信用が置けるので、アナログの認印よりは信用性が高く、認印と実印の中間くらいに相当する電子署名、と呼ぶのが適切かもしれません。

 

ここまでに出てきた2種類の電子署名は、いずれも「当事者その人(法人の場合は当事者である法人の代表者その人)の本人確認を経て発行された、その人のための電子証明書」を取得することにより、電子署名ができる、というパターンです。「当事者署名型の電子署名」と呼ばれております。

ところが近年よく取り上げられる「クラウドサイン」や「ドキュサイン」等の電子署名は、上記2種類の電子署名とは全く違うパターンの電子署名なのです。

どう違うのでしょうか?

答えは「クラウドサインやドキュサイン等は、署名する当事者その人のための電子証明書が取得されていなくても電子署名ができる」なのですが、詳しくは後編で説明いたします。

 

参考文献)「会社議事録・契約書・登記添付書面のデジタル作成実務Q&A」(日本加除出版株式会社)