コラム情報

自筆証書遺言書保管制度のメリット

2021.07.20

 『自筆証書遺言書保管制度』

 この制度は、令和2年7月10日全国の法務局(本局・支局等)で開始されたもので、

自筆証書遺言書を作成した本人が法務局に遺言書の保管を申請することができる制度です。

 

 本記事を書いております現時点で、この制度がスタートし約1年経過しておりますが、あまり利用されていないように個人的には思います。

 法務省のホームページの「遺言書保管制度の利用状況」を見ますと、令和3年5月時点(スタートより11か月時点)の保管申請件数が、全国で1万9443件となっておりまして、遺言公正証書作成件数が年間9万7700件(令和2年)であるのと比べると、「自筆証書遺言書保管制度」は、やはりまだ利用者が少ないのではと感じます。

 

 より普及されるべき制度だと思いますが、そもそも、遺言書を保管してもらうことで、どのような効果が期待できるのでしょうか。

 

 これまで自宅等で保管しなければならなかった自筆証書遺言書は、紛失・亡失のおそれがあること、相続人等の利害関係者による遺言書の破棄、隠匿、改ざん等が問題とされてましたが、法務局において適正に管理・保管されることで、そのようなリスクが軽減されるようになりました。

 

 また、保管制度を利用することで、遺言者だけでなく相続人や受遺者等にも以下のメリットがあります。

 

①相続開始後、家庭裁判所における検認が不要

 

 裁判所での検認(確認)の手続きが不要になるので、相続登記手続きもその分迅速に行えます。

 

②相続開始後、相続人等の方々は、法務局において遺言書を閲覧したり、遺言書情報証明書の交付が受けられる

 

 データでも管理しているため、遺言書の原本が保管されている法務局(遺言書保管所という)にかかわらず、全国どこの法務局においても、データによる遺言書の閲覧や、遺言書情報証明書(遺言書の画像処理された写し)の交付が受けられます。ただし、遺言書の原本は、原本を保管している遺言書保管所においてしか閲覧できません。

 

③遺言書保管官(法務局において、指定された法務事務官)から相続人等に対して遺言書を保管している旨の通知がされる

 

【関係遺言書保管通知】

相続人のうちのどなたか一人が、遺言書保管所において遺言書の閲覧をしたり、遺言書情報証明書の交付を受けた場合、その他の相続人全員に対して、遺言書保管所に関係する遺言書が保管されている旨のお知らせが届きます。

【死亡時通知】遺言者があらかじめこの通知を希望している場合、その通知対象とされた方(遺言者1名につき、お一人のみ)に対しては、遺言書保管所において、法務局の戸籍担当部局との連携により遺言者の死亡の事実が確認できた時に相続人等の方々の閲覧等を待たずに、遺言書保管所に関係する遺言書が保管されている旨のお知らせが届きます。

 

 以上のように、多くのメリットがあり、費用についても、保管の申請については1件につき3,900円、遺言書情報証明書の交付の請求については1通につき1,400円と比較的お安いので、遺言作成を考えている方は、残される相続人の為にも利用した方が良い制度だと思います。

 

 ただ、本制度の注意点としまして、

・必ず遺言者本人が法務局に出向いて保管申請をすること

・法務局では、遺言書の書き方を教えてくれないこと

・保管された遺言書の有効性を保証するものではないこと

 などがあげられます。

 特に、遺言書の書き方については、無効になることが決して無いよう、十分に注意して作成する必要があり、作成の目的によっては、公正証書遺言のほうが良い場合もあると思います。

 

 また、保管の申請書や請求書等の書類については、司法書士にその作成を依頼することができますので、お困りの際は私ども鈴木総合事務所にご相談くださいませ。

 

 最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。

 

令和3年7月20日

司法書士法人鈴木総合事務所

桑本 将弘