コラム情報

相続放棄が可能な期間

2023.01.05

相続が発生した場合、その相続人は被相続人(死亡した人)の財産に属した一切の権利義務を承継します(民法896条前段)。
そして、相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、

相続について、①単純承認②限定承認③相続放棄をしなければならないとされています(民法915条前段)。

特別な手続をしなければ、上記①単純承認となり、一般的にはこの場合が多いです。

その場合、例えば、Aが死亡しその財産が、現金1000万円、借金(債務)100万円であるような場合、原則としてそのすべてが相続人に承継されます。

もっとも、マイナスの財産がプラスの財産より多いような場合や、相続人ではあるが被相続人と縁が薄いような場合において、相続人が被相続人の財産を相続したくないような場合

各相続人は「③相続放棄」の手続をすることで、その相続を放棄し、初めから相続人とはならなかったものとすることができます(民法939条)。

なお、②限定承認の話はここでは割愛します。

さて、既に述べた通り相続放棄をしたい場合、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」に手続をしなければなりませんが、

実務においてこの期間については、かなり相続人に有利になるように緩やかに解されているのが現状です。

つまり、「3か月」を超えても相続放棄の手続が受理される可能性はまだあるということです。
そのような取り扱いをしている理由は様々なものが考えられますが、
①そもそも、裁判所も3か月が短いと思っている(相続が発生して葬儀などをやっているうちに3か月が過ぎる)。
②915条ただし書きで、初めから期間の延長が可能。
③相続放棄を否定した場合、相続人への影響が大きすぎる。

等の理由が考えられます。
相続放棄それ自体には、そもそも紛争性があるような事件ではないので、相続放棄の手続がなされた場合、基本的には広く手続を受理し、

仮に相続放棄の効力を否定するような債権者等の訴訟がなされた場合、その訴訟の中でその効力を判断していくというのが裁判所としての取扱いのようです(大阪高裁昭和61年6月16日決定参照)。

このように、相続放棄は期間経過後も認められる場合があります。
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なお、①単純承認、をした後で複数の相続人で遺産分割協議書をする場合、その協議内で相続財産を何ももらわないことを相続放棄と言う人もいますが、法律上の相続放棄は上記に述べたものとなります。