コラム情報

抵当権抹消登記①(前提登記の要否)

2021.04.20

銀行などの金融機関からの借入により土地や建物に抵当権が設定されている場合において、その全額を完済した場合等により抵当権が消滅した場合、抵当権抹消登記の申請をすることにより抵当権を消すことになります(自動的には消滅しません)。

金融機関から抵当権抹消に必要な書類が交付されますので、それを用いて抵当権抹消登記を申請することになります。

ただし、登記されている事項に変更事由がある場合には、抵当権抹消登記をする前提として別の登記を申請する必要があります。それにより、登記手続に係る費用にも変化がある場合がありますので、次に示していきたいと思います。

 

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●前提となる登記が必要な場合

①所有者の住所や氏名に変更がある場合⇒所有者の住所(氏名)の変更登記が前提として必要

②所有者に相続が生じている     ⇒相続による所有権移転登記が必要

③所有者に合併が生じている     ⇒合併による所有権移転登記が必要

④抵当権者に合併が生じている    ⇒合併による抵当権移転登記がが必要

 

上記①②③の場合には、これから登記申請をする所有者に変更が生じているので、現状に合わせる各登記が必要となります。例えば、①の場合「1 所有者の住所変更登記⇒2 抵当権抹消登記」の順序で登記申請をすることになります(2件分の登記の費用がかかります)。

 

なお、上記④の場合「1 抵当権の合併移転登記 ⇒2 抵当権抹消登記」の順序で登記申請をすることになりますが、「1 抵当権の合併移転登記」につきましては、抵当権者(金融機関)の事情なので、その登記は抵当権者が負担し、所有者の費用負担は「2 抵当権抹消登記」1件分のみです。

 

●前提となる登記が(例外的に)不要な場合

・抵当権者(買戻権者、仮登記権者)の本店、商号(住所氏名)に変更が生じている場合

 

 例えば、商号(銀行名)が「四葉日本XYZ銀行」として登記されているような場合にですが、現在は商号が「四葉XYZ銀行」と変更されているような場合です(本店移転がある場合も同様)。

 抵当権抹消登記の前提として、商号変更登記等の登記が必要に思えますが、「抵当権抹消」という、記載事項を「消す」登記を申請するために、抵当権者の商号変更登記等を申請するのは不経済との考え方から、例外的に当該登記は省略して、抵当権抹消登記を申請することができます。

 

 上記が一般的な抵当権抹消の際に注意すべき前提登記の要否です。

一般的な住宅ローンの返済の際のポイントとして、住所変更登記が必要か否かで、費用負担が変わってくる点でしょう。

 

もちろん、より複雑な場合も存在し、専門的な知識を要する場合がありますので、当事務所までお気軽にお問い合わせいただければ幸いです。

 

司法書士法人鈴木総合事務所

司法書士 正橋 史人

 

【参考先例等】

抵当権抹消の前提として表示変更登記不要につき(昭和31年10月17日民事甲第2370号通達)

仮登記名義人の前提として表示変更登記不要につき(昭和32年6月28日民事甲第1249号通達)

買戻権抹消の前提として表示変更登記不要につき(登記研究460号105頁)